菜の花の沖(一) - 司馬遼太郎 - 小説・無料試し読みなら、電子書籍・コミックストア ブックライブ

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江戸後期、淡路島の貧家に生れた高田屋嘉兵衛は、悲惨な境遇から海の男として身を起し、ついには北辺の蝦夷・千島の海で活躍する偉大な商人に成長してゆく…。沸騰する商品経済を内包しつつも頑なに国をとざし続ける日本と、南下する大国ロシアとのはざまで数奇な運命を生き抜いた快男児の生涯を雄大な構想で描く。

さすがに名作  「飛びあがった」など、機微は根底が俗に通じてゐるが、比喩の巧みさと語感の選択のうまさが内容を高らしめて、俗を俗たらしめてゐない。総じて名文といへるところが多い。  展開もうまい。まさか歴史小説で嘉兵衛とおふさの恋愛に惹きつけられるとは思はなかった。  初心者向けに用語を説明しようといふ気配りも大きい。  至る所、感心しづくしであって、小説を書かうといふ作家は、歴史小説・純文学・ミステリ・SFの垣根なく、おしなべて読むべし。日本史の勉強にも小説の勉強にもなる。